INTERVIEW

10年後には地元に帰り、自分の店をオープンさせる。目標に向かって好きなことをやっているから、毎日が楽しいんです。

ドミニクドゥーセの店
酒井大和さん

profile.

福井県立羽水高等学校出身。2016年3月に辻製菓専門学校を卒業後、三重県鈴鹿市の『ドミニクドゥーセの店』に就職。現在に至る。

大好きなクロワッサンを食べ比べ 過去最高においしかった店。

幼い頃から、福祉施設でお菓子づくりの指揮をとる母に連れられ、よく手伝いに行っていた。母の姿への憧れもあり、自然と志したのは食のプロだった。めざすは大好きなパンの世界。中学生になると、「将来は自分の店を開く」と周りにも宣言するようになっていた。
「高校でも言いふらしていたら、同じ野球部員の保護者でF1をよく観に行っている方に、『ドミニクドゥーセの店』のことを教えてもらって。辻製菓に入ってからは、有名なお店を回るようにしていたので、三重県へ遊びに行くタイミングで寄ってみたんですよ」
ドミニク・ドゥーセさんは、祖国フランスで厳しい修行を積んできたパン職人。第1回「F1日本グランプリ」が開催された1987年、HONDAのオファーで来日し、鈴鹿サーキットのベーカリーレストランのシェフに。そんな彼が1993年に独立し、鈴鹿市にオープンさせたのが『ドミニクドゥーセの店』だ。
「パンのなかでも一番好きなクロワッサンを食べ比べていたんですが、過去最高においしかったんですよね。お店で食べていたらドミニクさんが気軽に話しかけてくれ、そこでもう『ここに入りたい』と心に決めて。後日、併設のクッキングスクールで開かれたクロワッサンの教室にも参加して、印象づけておきました(笑)」

「彼は素晴らしい職人になる。 店を開いても、きっとうまくいく」

その後も歴代1位の座は変わらなかったため、2年次の就職活動期に直接アタック、熱意が伝わり採用へ。冬には、前年にオープンしたフランス店へ3週間、研修にも連れて行ってもらった。ドミニクさんはこう考える。
「僕は若い人にチャンスを与えたいし、勉強したい人には、本場の伝統と技術をとことんまで教えたい。フランス風ではない、本当のフランスの味です」
現在、酒井さんはミキシングを担当。ここから送り出される120~130種のパンや焼き菓子の土台となる生地は、すべて彼が手がけている。まだ入って1年経ったばかりだったが、その評価はすこぶる高い。
「若い人はガマンが足りず、責任感のない人も多い。だけど彼は違い、しっかりとした目標もある。珍しいことです。僕は教えたい人には厳しいから大変でしょうが、彼は素晴らしい職人になると思います。自分の店を開いても、きっとうまくいくでしょう」(ドミニク さん)
「すごくうれしいですね(照笑)。だけど、いまの環境は全然つらくないんですよ。野球部で鍛えられたんで、忍耐力はあるほうだとは思いますが…とても良くしてもらっていますし、好きなことをやれているから。毎日が楽しいんです」(酒井さん)

休暇中に吸収できるものも多い。 素材にも労働環境にもこだわる方針。

「とにかく原価にこだわっていないんですよ。フランスの高級なバターやチョコレートなんかも贅沢に使っているから、仕上がりもぜんぜん違います」(酒井さん)
100%フレッシュバター、新鮮な牛乳、純粋なカカオバター原料のチョコレート。良質な素材を使用することは、ドミニクさんにとって当然のことだという。しかし商品の価格はリーズナブル。秘密は人の手を必要としない工程での機械化だ。業界屈指の機械を導入し、無駄な人件費を抑えている。営業部の水野貴紀さんは言う。
「少数精鋭ですね。機械でできるところは機械を入れて、時間にゆとりをつくって、労働環境を良くする。それがドミニクの方針です」
店内にはレストランを併設。同県3店舗の拠点でもある。「F1日本グランプリ」での出張販売をはじめ、イベントも多く、勤務中はとにかく忙しいが、残業もなく週休2日を確保している。ドミニクさんは語る。
「給料が少なく、長時間働かせる。そんな業界のイメージを変えたいんです。しっかり休めれば、イヤにもならない。何事もバランスが大切です。できれば週休3日にしたい。連休があれば遠くにも出かけられるでしょう? 休みのときに吸収できるものも多いですから」

オープン時にはバスを出して お世話になった人たちをご招待!?

「行ってみたい店を探しては、休日には遠出もしています。将来はイートインのお店を開きたいから、雰囲気やスタッフの動きにも注目して。商品だけでなく外観や陳列もチェックするなど、学生時代とは視点が変わってきました」(酒井さん)
「まとめて仕入れをするなど、うまく手を取り合っていけたらと思いますね。長い目で見ると、街の小さなパン屋さんらとも協力していったほうがいい。大企業とはまた違う方法で頑張っていかないと」(水野さん)
「ここではジャムやソース、飲み物や料理、 すべてをつくっていますが、全部、彼に教えます。将来、必要になるはずです。手づくりの味を舌が覚えてしまい、自分のお店でも既製品は使えないでしょうから」(ドミニクさん)
大きくうなずく酒井さんに、「ひと通り身体に染み込ませるには3年は必要」と釘をさすドミニクさん。それに対し、酒井さんは「宣言通り、4年間は学ばせてもらいますよ!」と笑う。
「何年後にどうしていたいか、考えるのが好きなんですよね。4年後には、先日、訪れて気に入った鎌倉あたりで都市型店の流れを学んで、その後は東北もいいですね。秋田美人の伴侶をつかまえて(笑)、それから北海道。原料の生産現場も見ながらやってみたい。いまから10年後には満を持して、地元で自分の店をオープンさせるんです。ドミニクさんらはもちろん、お世話になった先生方も友だちも、みんな呼びたい。バスを出して招待しますよ!(笑)」

目標は、師匠であるドミニクさん。 だけど、いつかは超えたい。

パンは生き物。1年を通じて同じようにはできない。気温や湿気はもちろん、バターや小麦粉などの素材の状態も季節によって変わる。なかでもクロワッサンは難しい。
「とくに気に掛けているのは時間。発酵の過不足で仕上がりが悪くなりますし、自分の作業が遅れると成形やオーブンの人たちにも迷惑がかる。チームワークが大切です。辻製菓では、自分たちでタイムスケジュール組んで連携していたので、その経験も生きている。基本をしっかり叩き込んでもらえたので、今も理論的に技術が高められているのを感じます」
授業はいつも前のめりだった。先生たちは、聞けば聞くほど教えてくれる。自分の時間を割いてでも相手をしてくれた。いまと同じく学生時代も、毎日が楽しかったという。
「休みの日には、学校にもよく遊びに行っていますよ。近況報告はもちろん、技術的な質問をさせてもらうことも多いです。先生方がいつも学校にいてくださるのは心強い。いつ帰っても会いに行けて、ずっと見守ってもら える存在は大きいですね」
規模も形態も、現在の店舗は理想的。常に向上心をもち、新しいものを取り入れる師匠、ドミニクさんは酒井さんの目標だ。でも、やはり。
「いつかは超えたいですよ。まだまだ先ですが、僕もドミニクさんみたいに、次の世代を指導したい。そしていまの僕みたいに、独立する人をバックアップしたいなって思っています」

酒井大和さんの卒業校

辻製菓専門学校 launch