INTERVIEW
No.027

時間を忘れてしまうほど 絵も料理も、好きでした。

モード・カフェ・ギャマン 料理人

横濵一樹さん

profile.
2015年エコール 辻󠄀 東京 辻󠄀フランス・イタリア料理マスターカレッジ卒業後、研修先だった木下威征シェフ率いるギャマングループに入社。小さな頃から料理が大好きで、高校入学の時には料理人になることを決めていたという。料理の他に絵や図工、被服など多趣味で、興味のあるものには時間を忘れるほどに熱中するタイプ。特に料理と絵は表現・創作に相通じるものがあるようで、お店のイベント告知やメニューなども今では彼が任されているほど。
access_time 2017.09.15

一流になりたいなら、
一流に学べ、一流で働け。

「幼い頃から家族に料理を作るのが好きで、母親も優しく見守ってくれていました。その頃から、料理の道に進むことを決めていました」
横濵さんの地元は岩手県。通っていた高校には調理選択過程があり、高校卒業時には調理師免許を取得。料理人を視野に入れた高校進学だったわけだ。
「高校2年の時に、家を新築する機会があって、キッチンの設計を任されました。その時にはすでに料理の道に進むことを決めていましたから、親に『好きに設計してみろ』と。入れる設備もキッチンの高さも自分で決めて。ますます家庭で料理をつくるようになりました」
そしてさらに、一流のプロ料理人をめざしてエコール 辻󠄀 東京への進学を決める。
「一流になりたいなら一流に学べ、一流で働け、というのが校長先生のアドバイスでした。それなら辻󠄀しかない、と。事実、今こうして木下シェフの元で働けるようになりました。とても幸せな気分です」

料理は創造力です。
そのためには、基本が大事。

オー・ギャマン・ド・トキオのギャマンというのは「いたずら小僧」という意味。型通りのフレンチにこだわらず、さまざまな発想(遊び心)を取り入れて新しい料理の世界を切り開いていく、ちょっとやんちゃでお客様へのサービス精神に富んだ姿勢を表している。木下シェフも辻󠄀調グループ出身。料理界に『鉄板フレンチ』という概念を持ち込んだことでも知られ、食のガイドブック「東京最高のレストラン」100店にも選ばれ五つ星を獲得。国内はもちろん海外からの取材も後を絶たない。
「僕の場合は、学校に木下シェフが外来講師で来られた時に、シェフの考え方に憧れて。そのあとひとりで食べ歩きに行った時もシェフとお話させて頂いたのですが、本当に激震が走ったというか、ここしかないと思って、研修させてください、とお願いしたんです。3日後からすぐに研修させていただきました。お客様を幸せにしよう、笑顔になって帰ってもらおう、というのを料理以外のところでも考えるのが大事ということが、本当にその通りだなと。サービスや、プラスαで何かできることも自分で考えていきたいと思っています。
特徴的なオープンキッチン
このお店はお客様と対面しながら調理する、オープンキッチンが特徴です。お客様の好みやその時の気分に合わせて料理をお出しするという創造力やおもてなしの精神に心を打たれました。料理は創造力だ。木下シェフのキッチンに立つ姿に、僕も将来ああなりたいと素直に憧れました」
当然、創造力だけで料理人は務まらない。
「大切なのは基本です。素材の組み合わせや調理方法の応用も、基本があればこそ新しい発想につながります。好きだからこそ、まずは基礎をしっかり学ぶ。創造や発想はその上に重ねていくものだと思っています」
店内のグラフィックは、ほとんど横濵さんの手によるもの

「絵」のプレゼンテーション

横濵さんの職場は、オー・ギャマン・ド・トキオの1Fにあるモード・カフェ・ギャマン。フレンチもイタリアンもスイーツも楽しめるカフェレストランで女性に人気のお店。最初は中目黒のお店でサービスを学び、ここに移ってから調理を担当するようになった。
お店の壁には手書きのメニューポスターが貼られていた。メニューのアルファベットがきめ細かく組み合って、生き生きとした魚のイラストになっている。これは、横濵さんの作品だという。聞いてみれば、店頭のボードもイベント告知もほとんどが彼の作とのこと。
「料理と同じく、絵も得意でよく描いていました。絵と料理はよく似ていて、発想したものを形にしていく作業です。どうすれば思い通りになるのか、もっといいものに仕上がるのか。そのためには創造力というか、創意工夫が不可欠です」
木下シェフのお客様に対する料理のプレゼンテーションを間近で見ていて、今の自分でできること、という発想から、メニューを絵にしてプレゼンテーション。それが認められ、絵のメニューを描くようになった。
「季節やコースのテーマや催事に合わせて、描くテーマは異なります。でもどうすればもっと楽しく、わかりやすいものになるか、お店の姿勢である「いたずら心」を発揮できるか、時間を忘れて取り組んでいます。好きこそもののなんとか、ですよね」
モード・カフェ・ギャマンのシェフ佐山さんも辻󠄀調の先輩

経験を積むほどに仕事の幅が広がる。
大変だけど、それが面白い。

働きはじめて2年目。そんな彼に今のテーマを聞いてみた。
「今は、まだまだ学び期間です。もちろん学ぶのは調理だけではありません。メニューの考案、食材の手配、接客、もちろんメニューを描くことも大切な仕事です。任されれば責任もありますし、工夫も求められます。大変だけど、それが今のやりがいです。」
「生雲丹と赤茄子のソース オレンジ風味 手打ちタリオリーニ」
「プロの料理人になるというのは、料理をお出しして、楽しい時間を過ごしていただくのが基本ですが、それに至るまでのプロセスもすべて視野に入れてマネジメントできなければなりません。ですから、もっと信頼されてもっといろんな役割を任されること。それがテーマです」
オマール海老のオランデーズ焼き 旬野菜添え

辻󠄀調で学んだことは料理の芯。
その価値は十分生かされています。

実に積極的で前向き。料理人として料理の世界で働くことが実に楽しいという。その気持ちは、辻󠄀調時代に育まれたそうだ。
「辻󠄀調で僕は料理の世界の広さ深さと、それを身につける楽しさを教えてもらいました。調理することと同時に衛生学や栄養学など実に学ぶ分野が多く、それを知るほど料理のすごさが実感できました。自分なりに追求していくとまた新しい発見が必ずあります。料理の芯みたいなもの。その太さが見えてくると、料理はもっともっと楽しくなる。僕は、辻󠄀調の学費は親に頼らず、教育ローンを使い、自分で賄いました。その価値は十分にありましたし、今それがしっかりと生かされています」
辻󠄀調グループの先輩たちも多い
シェフから学ぶために、今のテーマをのり越え、信頼を積み重ねたい。
冒頭の言葉に、「一流に学び、一流で働け」というのがあった。では一流シェフのお手本として、横濵さんは木下シェフをどんな気持ちで見上げているのだろう。
「今のテーマで任されることが増え、信頼されることの先に、もっと身近で、シェフの一挙手一投足から学びたいのが本音です。憧れるのは、料理への創造力。お客様との会話の中で気持ちを理解し、その時ある素材でいかに組み合わせれば味わい、見た目、ともに喜んでいただける料理が完成するか。しかもそこには真心がしっかり備わっています。その柔軟な発想と創造力は、身近にいてダイレクトに感じることが大切。一流のお店、一流のシェフのもとで働けるというのは、そういうことだと思っています」

3年後、5年後の自分を見つめながら成長したい。

ギャマン・グループは、現在5店舗のレストランの他に、スイーツ店、洋菓子の商品開発や、宮古島でのレストランリゾート計画など、その業容も急速に広がっている。求められるのは、若手の成長だ。
「僕は21歳ですが、3年後はどうあるべきか、5年後はどうなっていたい?常に自分に問いながら、仕事に向かっています。思い浮かべるのは、木下シェフのようなお客様の気持ちをつかめる料理人になること。身につけるべきはバリエーションの多彩さです。知恵と技量を、確実に一つ一つ積み重ねていくこと。大好きな料理の世界に、自分の成長や未来を描くって、こんなに素敵で幸せな職業は、ほかにありません」

横濵一樹さんの卒業校

エコール 辻󠄀 東京 辻󠄀フランス・イタリア料理マスターカレッジ  (現:辻󠄀調理師専門学校 東京) launch

エコール 辻󠄀 東京
辻󠄀フランス・イタリア料理マスターカレッジ
(現:辻󠄀調理師専門学校 東京)

フランス料理とイタリア料理の現場で、
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フランス料理とイタリア料理。
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