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第8回辻静雄食文化賞 贈賞式開催

 教育者であり、研究者でもあった辻調グループの創設者・辻静雄(1933~1993)。フランス料理の普及への貢献と多彩な出版活動が認められ、日本人として初めてフランス国家最優秀職人章(M.O.F.)を受章している。辻静雄のその志を受け継ぎ、幅広い分野で食文化を支える人々を讃え、応援することを目的としているのが、辻静雄食文化賞である。

 2017年7月5日、第8回辻静雄食文化賞の贈賞式が開催された。会場となった明治神宮外苑 明治記念館「相生の間」には、過去の受賞作品や、辻静雄の著作が展示された。
辻静雄食文化賞には、魚食文化の衰退とその元にある問題を的確に指摘して警鐘をならしている、濱田武士著『魚と日本人-食と職の経済学』(岩波書店)が、また専門技術者賞には、地方における料理人とレストランのあり方のモデルを確立した、レストラン「モリエール」のオーナーシェフ中道博氏がそれぞれ選定された。
 辻静雄食文化賞選考委員長 石毛直道氏(国立民族学博物館名誉教授)からの講評。
 「魚に関わる職業の人が魚食文化の担い手でした。しかし現在、町の魚屋さんはどんどん廃業しています。魚に関わる仕事をしている人と消費者とのコミュニケーションがなくなってしまったことが現代の問題。著書では、漁業・流通・小売りなど様々な人に調査を行い、問題点を指摘しています。魚の流通と、魚に関する食文化を経済の視点で読者に考えさせてくれる素晴らしい業績です」
 辻静雄食文化賞を受賞した濱田武士氏の挨拶。
 「食べることと働くことが豊かであれば、世の中がよくなるのではないかと思っています。漁業・流通・食べる人。魚を通じて人はつながっています。効率主義ではそのつながりが希薄になる中、食べることと働くことを繋ぎたいという想いで自作を書きました」
 専門技術者賞小委員会委員 門上武司氏(「あまから手帖」編集顧問)からの講評。
 「地方を代表するシェフであるが、地方であるということだけが受賞理由ではありません。北海道でいろいろな生産者に会った際に、モリエールで食材を使われることが光栄で、原点に戻るような思いと話がありました。生産者にとって中道さんは輝かしい存在。しかし、中道さんは地方のレストランはその土地のものに頼りすぎてはいけない、と言います。食材が日本各地・海外でどの位置にあるのかを理解しなくてはいけない。地方にいながら常に日本全国・世界をみています。また、後進の育成にも強い力を発揮され、新たな料理人像を確立されました」
 専門技術者賞を受賞した中道博氏の挨拶。
 「辻静雄先生を冠した賞をいただくことをうれしく思っています。賞をいただくことは、頑張れよという評価で、もっと切磋琢磨していきたいと思います。地方では不便だからこそできることがある。不便こそが何かを生むんじゃないかという考えに至って、今もやっています。今後も北海道という土地を活かしながら、料理にこだわり、サービスはやわらかく、お客様がリラックスできるレストランを目指したいです」
 乾杯の発声は、第3回辻静雄食文化賞 専門技術者賞を受賞した谷昇氏。
 「食べるということ、食べなければ人は生きていけない、料理を勉強することは文化であり、教養であると辻静雄先生から教わりました。濱田さんと中道シェフが受賞され、本当にうれしく思います」
 歴代の受賞者もステージに上がって受賞者を称えた。
 食業界で活躍する面々の揃った会場では、「食文化」、「食業界の未来」についてなど、話が尽きることはなかった。

【辻静雄食文化賞】
我が国の食文化の幅広い領域に注目し、よりよい「食」を目指した目覚しい活動を通じ、新しい世界を築き上げた作品、もしくは個人・団体の活動を対象に選考し、これに賞を贈るもの。また特別部門として専門技術者賞を設け、調理や 製菓等の現場で活躍する技術者を顕彰する。辻調グループ創設者・辻静雄の食文化普及の活動を記念し、またその志を受け継ぎ、食文化の多様で豊かな発展に寄与することを目的として、2010年に辻調グループ創立50周年 記念事業として創設された。以後、毎年実施。