INTERVIEW

好きなことじゃなきゃ続かない。スタッフを大切にするシェフのもと、お菓子づくりにのめり込めるから毎日が楽しい。

なかたに亭 パティシエ
長谷川千紗さん

profile.

兵庫県出身。高校を卒業後、大学へ進学するも、約1年半で中退。その後2012年4月、辻製菓専門学校へ進学。アルバイトで学費を貯め、フランス校秋コース(2013年10月~2014年8月)への留学を経て、2015年1月から『なかたに亭』に勤務。現在に至る。

大学へ進学したものの、のめり込めていない自分に気づき、辻製菓へ再進学。

「クラスメイト全員が大学へ進学するような高校だったんですよ。だから先生に『パティシエになりたい』と伝えても、『そんなのは一部の人間しかなれない』って言われちゃって。だったら好きだった理科の教師をめざそうと大学に入り、1年半ほど通ったものの、のめり込めていない自分に気づいたんですよね。遊んでいる時間も長いし、なんだか無駄に過ごしているような気がして…。本当にやりたいことは何だろうと考えたとき、やっぱりお菓子をつくることだと立ち返ったんです」
フランス校時代
できればフランス校でも学びたいと辻製菓へ。実習では、同じものを何度も繰り返しつくったが、日によって出来具合が変わってくる。そこが難しくもあり、面白くもあると感じた。
「同じ『卵1個』でも水分量が違いますし、数が多くなればなるほど差も大きくなるから、調整は自分たちの腕次第。ちょっとした混ぜ具合の違いによっても、生地の状態が全然変わってくる。そのあたりは理科の実験にも通じる楽しさがありました。なぜこうなるのか知りたくて先生に訊きに行くと、答えをすぐに教えてくれるのではなく、ヒントと考える時間をくださるんです。その繰り返しで、『もっと知りたい』という好奇心が掻きたてられました」

シンプルだけど個性があって、チョコレートで勝負しているケーキに感動した。

「入学後は、かなりの数のケーキ屋さんを食べ歩きました。大阪だけでも数十軒。そのなかでも『なかたに亭』で食べたカライブが、感動的においしかったんですよ。他店には複雑な組み合わせのお菓子も多かったんですが、ここはシンプルだけど個性があって、チョコレートで勝負しているような印象。そこに惹かれたんです。『チョコレートだけでも、こんなにもおいしいケーキがつくれるのか!』と衝撃を受けました」
なかたに亭の『カライブ』
1987年から続く、大阪・上本町の『なかたに亭』は、素材にこだわったシンプルなお菓子に定評がある。産地別カカオの特徴を生かしたチョコレートの販売も手がけていて、とくにチョコレートを使ったケーキは人気が高い。オーナーシェフの中谷哲哉さんは語る。
中谷シェフ(右側)
「あまりたくさんのものを組み合わせるのは好きじゃないんですよね。詰め込みすぎると、味がわからなくなるでしょう。料理を食べたあとだと特に。レストランで働いていた経験が長いので、当時からそうならないようには気を配っていて。デコレーションも、あまり好きじゃない。見た目を重視し、色や飾りにこだわられているところも多いですが、僕は味が一番。おいしくないものは乗せたくないし、すべてが味につながることを大前提にしています」

常に何を求められているかを察して動く力は、フランス校でも鍛えられた。

フランス校での留学から帰国した長谷川さんは、迷わず『なかたに亭』への就職を志望。販売スタッフを経て、2015年4月からは1階に併設しているカフェの厨房で、当時、メニューにあったランチやドリンクを担当した。
「フランス校には料理の学生もいて、実習ではレストランのデザート部門を担当していたので、フランス料理を食べる機会も多く、すごくフレンチが好きになったんですよ。その後、『なかたに亭』に入って1年間、シェフからランチについても教わったので、将来はレストランスタイルのお店を開きたいなって夢も芽生えました」
翌年度からは製菓の厨房へ。ポジションは大きく、生地、ムース、オーブン、チョコレートの4つに分かれていて、最初の1年間は全部門をサポート。「常に何を求められているかを察して動く力は、フランス校でも鍛えられた」と長谷川さんは振り返る。その後、2017年4月からは生地づくりの専任に。今後、1年ずつ各部門を担っていく予定だという。
「販売のスタッフとも連携しながら残数の状況を見て、少なくなっているからつくろうとか、この時間までにこの作業を終わらせようとか、考えるのが楽しいです。自分の作業が全体に影響する分、責任重大ですし、みんなで連携するチームプレーが大切。スムーズに流れるとうれしくなりますね」

お菓子づくりの基本が身についていなければ、上には昇っていけない。

「『なかたに亭』の風土は本当に最高です。シェフがスタッフ一人ひとりのことをすごく考えて、ものすごく働きやすい環境にしてくれている。『今日は行きたくないな~』なんて日がありませんからね(笑)。トップダウンじゃなく自主性を重んじてもらえるので、やりがいがあります」(長谷川さん)
「のびのびと働けることは、とても大切にしています。スタッフの空気って、お客さんに伝わりますからね。我々の仕事にチームワークは欠かせません。僕はラグビーをやっていたんですが、試合中に文句は言わないでしょう。誰かが失敗したらカバーしようとする。仕事だって同じです。だけど失敗したら、その場で上の人間が責め立てるようなケースも多い。そんなん試合に負けるやん!と思うんですけどね (苦笑)。そこは『大丈夫、大丈夫!』って言ってあげないと」(中谷さん)
自身も辻調グループの卒業生である中谷さん。年は30以上も違うが、自分たちが教えてもらった基本の部分は、それほど変わりがないと感じるそうだ。
「お菓子そのものの基本は変わらない。そこができていなければ、上には昇っていけません。その点、辻はクラシックなスタイルを徹底的に学ぶので、今の手法や材料を知れば、応用していけます。それにフランスを知ってくれていると、やはり何事も伝わりやすい。最新のレシピは働き始めてからも随時、学んでいくものなので、文化や背景など普遍のものを見ておくことが重要だと思います」

これから進路を考える人も、やりたいと思ったら、その道に進んでほしい。

「僕の考えていることや、なぜこういうつくり方をするのかなどは、すべて教えるつもりです。覚えたら自身でどう表現するかが重要になってくる。その部分は、今からやっておくべきだと思うんですよね」(中谷さん)
『なかたに亭』では、スタッフの誕生日には、持ち回りで全員がバースデーケーキをつくることになっている。バレンタインには各自で用意。そういった機会に、創造力を発揮できる。
「先日、長谷川がつくったケーキに対し、『これは自分にはできないな』と思いましたよ。味はまだまだでも、形や組み合わせに驚かされたのが、うれしかったですね。未熟でも自分で考えてチャレンジすることが大切。英語だって全部覚えてから話そうとするより、とにかく話したほうが練習になるでしょう。どんどん吸収して、消化して、オリジナルのものをつくれるようになってほしいです」(中谷さん)
入社後は毎年、社員旅行にも参加。2017年は台湾で、多彩な美食を堪能した。ほかにも新たな食にふれる機会を数多く提供してもらっているという。休日には自身で食べ歩きに出かける長谷川さん。遠方にも足を延ばし、引き出しを増やしている。
毎年実施の社員旅行 2017年は台湾
「シェフからの教えもあって、『自分なら、もっとこうする』という目線を忘れないようにしています。考えるのが楽しいんですよね。今は毎日が本当に楽しい。やっぱり好きなことじゃないと続かないんですよ(笑)。だからこれから進路を考える人も、やりたいと思ったら、その道に進んでほしいですね」(長谷川さん)

長谷川千紗さんの卒業校

辻製菓専門学校 launch

辻調グループフランス校 製菓研究課程 launch