INTERVIEW
No.095

物心ついた頃から料理人に憧れ、高校の食物科から料理の専門校、フランス留学へ。食を通じて海外へ飛び出し、自分の世界も広げたい。

プレスキル コミ・ド・ラン(サービス担当)

安藤孝彰さん

profile.
岐阜県出身。岐阜県立大垣桜高等学校食物科を卒業後、エコール 辻󠄀 大阪の辻󠄀フランス・イタリア料理マスターカレッジを経て辻󠄀調グループ フランス校へ。2016年に卒業後、在学中からアルバイトをしていた大阪・本町のスペイン料理店『エチョラ』に就職。2018年4月から大阪・淀屋橋のフランス料理レストラン『プレスキル』にサービススタッフとして転職。現在は海外で働くことを目標にスキルを磨いている。
access_time 2019.07.19

高校進学時、とにかく料理の勉強がしたくて、迷わず食物科を選択。

「なぜ料理人になろうと決めたのか、正直、明確なきっかけは思い出せないんですよね。田舎の出身で家に畑があったから、祖母の野菜づくりや、それを使った母の料理を自分も手伝っていて。物心ついたときには、すでに料理をやりたいと思っていました」
生まれは岐阜県の本巣市。中学生の頃には、当時ブームだったスペイン料理に憧れ、県立大垣桜高等学校の食物科へ進学。とにかく料理の勉強をしたかったため、調理師免許が取れる同科を迷わず選んだ。
「テレビで紹介されいていたスペイン料理がとても魅力的に見えたんですよね。高校では、包丁の研ぎ方や食材の扱い方など、基礎の基礎から学べました。座学でも、食品学、公衆衛生、食品衛生、食文化など幅広く教えてもらえ、今でも基盤になっています」
ミートデリカコンテストにて
2年次には、国産食肉を使う惣菜のレシピを考える「ミ-トデリカコンテスト」に応募し、岐阜県代表として全国大会へ進出。
「いろんな文献を見て、料理を考え、レシピにまとめて、形をつくる。そんな一連の経験ができたのも良かったです。1年生のとき、同級生の男子が全国大会に進出したことも刺激になりました」
ミートデリカコンテストにて

さらに学びを深めようと専門学校へ。仲間がいたから、より頑張れた。

みんなをまとめる役割が好きだったこともあり、1年の後半からは生徒会の副会長を務め、3年次には生徒会長となった。卒業後は就職する気でいたものの、大阪にある辻󠄀調理師専門学校へ訪問して体験授業を受けたり、同校教員の出張授業を受けたりしたことで考えが変わった。
「もっと学びたいという知識欲がわいてきたので、辻󠄀調グループのエコール 辻󠄀 大阪へ進学しようと決めました。岐阜にも専門学校はありますが、高校を出たら調理師免許は取得できるので、さらに専門的な勉強ができるところへ行きたかったんです。同じ高校で、今は東京のミシュラン二つ星レストランで頑張っている友人が早くから志望を決めていたので、その影響もありました。仲間がいるおかげで『負けていられない』と頑張れるので、同級生の存在は大きいですね」
いざ進学すると、文字通り料理漬けの生活。毎日が新鮮で面白く、授業の内容は期待以上のレベルだった。加えて高校で学んでいたおかげで、土台となる基礎の部分をより固められたと振り返る。
エコール 辻󠄀 大阪時代
「先に作り方を見せてもらってから、別の日に実習をやるスタイルだったのも良かったです。一度、自分のなかに落とし込んでから、グループで段取りを決めて臨むと、記憶も定着しやすいですし、考える力も養われますし、チームワークも身につきますし。とても効率よく吸収でき、現場力が高まった気がします」
エコール 辻󠄀 大阪時代 佐々木シェフの特別授業のあとで
学生生活でとくに印象深かったのは、外来講師による特別授業だったという。
「ミシュランの星付き級のレストランから名だたるシェフたちが来校され、直接学べるんですからね。毎回とても刺激的でした。そのなかの一人が、現在勤める『プレスキル』の佐々木シェフ。当時は神戸ポートピアホテルの最上階にあるフランス料理店『トランテアン』のシェフを務められていたんですが、すごいオーラに魅了されて…。まさか一緒に働ける日が来るとは思いもよりませんでした」
佐々木康二シェフ(左)

世界が一気に広がったフランス留学。研修先での高評価が自信にも。

在学中はスペイン料理店『エチョラ』でのアルバイトにも励み、漠然とした憧れを明確な目標に変えていった。1年間の課程を終えると、辻󠄀調グループのフランス校へ進学。もともと海外で働いてみたいと考えていたため、最高の経験だったと目を細める。
フランス校時代
「これまでの概念が全部ブチ壊されました(笑)。食材、文化、言葉、何もかも違うなかで、人として料理人として、どう動くべきかを考えながら過ごしましたからね。あり得ないぐらい、世界が一気に広がりました」
フランス校時代 研修先にて
研修先はフランスの南西部、ペリゴール地方。レストランとビストロを構える店舗だった
「実家と同じぐらい田舎で(笑)、日本人にもいっさい会わない場所だったので、精神的にも鍛えられました。レストランでは仕込みと前菜、ビストロでは前菜とデザートを担当。少数精鋭のお店だったので、研修ながらもワンポジションをほぼ任されて…。メインである肉料理のサポートにもつかせてもらいました。ほかの外国人研修生もいるなか、高く評価してもらえていたようで、『ビザを取って残ってくれないか』と言ってもらえ、自信にもつながりました」
一方で、留学中もスペイン料理への想いは変わらず、バカンス中はスペインへと足を運んだ。
「素朴さもあり斬新さもある。フランス料理を学んだからこそ、スペイン料理の面白さもより深く感じました」

憧れだったスペイン料理店に就職。海外で働きたい思いが強まった。

卒業後は『エチョラ』に就職。少数精鋭型のレストランだったこともあり、毎日忙しく過ごした。
「シェフと2人きりのときもありましたからね。必死でしたが、だからこそ速度が身についたと思います。西洋料理はすべて影響し合っていて、基礎自体は変わらないので、これまでの学びもすべて活かせました。オープンキッチンなので、常にきれいに保つ意識も不可欠。厨房の基礎を叩き込まれました」
在職中は、スペインのワイナリーやぶどう畑へ見学に行く研修にも参加。自分の世界が広がるにつれ、海外で仕事をしたいという気持ちも募るばかりだった。そのためにまず、世界的に評価の高い日本のサービスを学びたい。ワインの知識も深めたい。そう考えて選んだのが、現在勤める『プレスキル』だった。
「留学中に開業されていたことを帰国後に知って、友人と食べに行ったんですよ。すると料理は当然のことながら、サービスにものすごく感動して…。今まで食べ歩いてきたなかで最高だったので、いざサービスの仕事をしたいと考えたとき、一番に思い出したんです」
すでに同店で働いていた辻󠄀調グループの同級生を介して募集を知り、就職を志望。「いずれは海外で仕事をしたい」という目標も伝えたうえで採用に至った。

最高のサービスを提供するフランス料理店で、新たなチャレンジを。

安藤さんが惚れ込んだ『プレスキル』のサービスに対し、佐々木シェフも共感する。
「自分たちで言うのもなんですけど、うちはサービスの評価がとても高いんですよ。支配人や副支配人はホテルで経験を重ねてきた人間なんですが、ホテルだと無駄話ができないでしょ?  でもつかず離れずといった距離感だと、お客様のなかには見張られているような気になる人だっていらっしゃる。お客様との距離感をつかめるように、少しづつフランクになって、普通に会話できるようになって…だけど料理と同じで、基礎の部分は外さない。だから評判がいいんだと思います」
ベースとなっているのは一流ホテルのサービス。技術レベルは高いものを要求されるため、難しくも面白いと安藤さん。
「ナイフの持ち方や置き方一つとっても、きれいに魅せるコツがあって勉強になります。実施しているお店の少ないフランベのサービスも早くから経験させてもらえていますし…。あたりはフランクだけど、決めるべきところはビシッと決める。そんなサービスをゼロから教えてもらえています」
そう語る安藤さんのことを、佐々木シェフは「自分で考え、自分なりに解釈して、行動できるタイプ。料理を学んできたこともサービスに活かせていると思いますよ」と評価する。それに対し安藤さんも「料理を学んできたことで、どういう背景があり、どうつくっているのかも説明できますし、サービスにも役立っています」と続ける。
「佐々木シェフは料理にとことんこだわって、探究心がすごい。訊けば全部教えてもらえ、身になっています。きれいな盛り付けのお皿を毎日見られますし、食材の組み合わせ方など、料理人の視点からも学ぶところが大きいです」

食を切り口にして世界に飛び立てるのも、食にまつわる仕事の醍醐味。

「サービスの正解は一つじゃありません。一人ひとり違うお客様に接しますからね。瞬時に考えて行動し、お客様が喜んでくださったり、いい反応を示してくださったりすると、やりがいを覚えます。レストランは、料理だけでなくサービスがあってこそ。そのなかで自分の技術が上がったり、できることが増えたり、努力の成果が発揮できたりすると、さらに面白味を感じます」
『プレスキル』は、現存する日本最古のワイナリー「まるき葡萄酒」が開いたレストラン。働き始めてから、ワインもますます好きになった。この8月には、ソムリエの認定試験にも挑戦する。
「単純に味わいも好きなんですが、料理と合わせたとき、二倍にも三倍にも映える点が何より面白いです。趣味と実益を兼ねた食べ歩きも学生時代から続けているので、1日24時間では足りないぐらい充実しています。料理もそうですが、好きなことが仕事になって本当に幸せですよ」
ゆくゆくは再び料理をつくってみたい。サービスももっと極めたい。フランス料理もスペイン料理も好きだが、アメリカやアジアの料理にも興味がある。やりたいことは山ほどあるが、今は何より「世界がどんなものなのかを見てみたい」という気持ちが大きいという。
「地域ごとに違う食文化を体感して、知らないことを知り、自分の世界を広げたい。そんな好奇心が一番勝っているんですよね。だから今は、枠にとらわれなくてもいいのかなと。食を切り口にして世界に飛び立てるのも、食にまつわる仕事の大きな魅力。少しでも興味をもっているなら、一歩踏みだして、世界を広げてみてほしいです。世界が広がるにつれ、面白さが増していくと思いますよ」

安藤孝彰さんの卒業校

エコール 辻󠄀 大阪 辻󠄀フランス・イタリア料理マスターカレッジ launch

辻󠄀調グループフランス校 フランス料理研究課程 launch

辻󠄀調グループ フランス校

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