INTERVIEW
No.039

料理の美しさに感動したシェフのもと、発想力を磨かせてもらっています。

Restaurant FEU(レストラン フウ)

飯島椋介さん 

profile.
飯島さん(写真右)/茨城県立土浦第二高等学校卒業。2015年3月エコール 辻󠄀 東京 辻󠄀フランス・イタリア料理マスターカレッジを卒業後、フランス校へ。フランスでは『Regis et Jacques MARCON(レジス・エ・ジャック・マルコン)』で研修をする。2016年3月に東京・南青山のフランス料理店『Restaurant FEU(フウ)』に就職。現在に至る。
松本浩之シェフ(写真左)/1988年辻󠄀調理師専門学校を卒業。銀座『レ・ザンジュ』、小田原『ステラマリス』などを経て、1995年にフランスに渡る。『La Côte d'Or(ラ・コート・ドール)』『Restaurant Albert 1er(アルベール・プルミエ)』などを経て2000年に帰国。銀座の『レ・ザンジュ』や『ベージュ東京』の料理長を経て、2006年に『Restaurant FEU(フウ)』の7代目料理長に就任し、現在に至る。同店は2012年より6年連続で「ミシュランガイド東京」の一ツ星を獲得し続けている。
access_time 2017.12.08

揺らがなかった料理人への決意

小学生の頃から食べるのが好きで、両親が留守の時に自分で料理をするほどだった。当時から「どうしたら美味しくなるか」をよく考えていたという。家族や友人に料理を作っているうちに、料理の道に進みたいという気持ちが大きくなっていったが、高校が進学校だったこともあり、両親は当初、「大学を卒業してからでも遅くはない」と反対したという。
「でも僕の中では料理業界に進む決心は揺らがなかったんです。それで1年がかりで説得して、高校2年生の頃には両親も納得してくれました。」
その頃、従姉妹が結婚した。相手は銀座で洋食店を営むシェフ。料理の道に進みたいと相談すると、専門学校で学ぶことを勧められ、そのひとつが辻󠄀調グループだった。

授業での学びと料理店での研修で
“食”業界で働く喜びを感じる。

学校では「有給研修」の制度を利用し、放課後に学校が紹介してくれた料理店で研修生として働いた。立川エリアでは有名なフランス料理店だった。
「最初の頃は何の仕事もできずに、全く役に立ちませんでした。だから、働き始めた当初は緊張していましたね。立川へ向かう電車の中ではいつも心臓がドキドキしていましたし、お店に行くのが憂鬱になったりもしたんですけど(笑)3ヶ月もすると、できる仕事が増え、スタッフともコミュニケーションができるようになり、働くことが楽しくなっていきました」(飯島さん)
エコール 辻󠄀 東京の特徴は少人数の実習。実習の前の「実習講習」で先生のお手本を見て、次に自分たちで調理していく。
「同じ材料、同じ手順で作っているはずなのに、なかなか同じ味にはなりません。僕は実習が終わると積極的に先生に質問をするようにしていました。どの先生も丁寧に答えてくれて本当にありがたかったです。ある先生から、『毎回質問に来るのは君ぐらいだ』と言ってもらえたときは嬉しかったですね」(飯島さん)

コミュニケーションに苦戦したフランス留学で、会話を予測する習慣を身につける。

東京で1年間学んだ飯島さんは、フランス校へ。現地で学び始めると大きな壁にぶつかった。
「はじめは言葉(フランス語)が分からないんです。電車に乗るにしても、買い物をするにしても、少し話が進んでいくと分からなくなる。授業でも、日常会話の勉強はするのでだんだんと慣れてきましたが、言葉がなんとか理解できても相手の考え方や『ノリ』が分からない。そこに悔しさみたいなものを感じました」(飯島さん)
フランス校の修了式 優秀賞を獲得
飯島さんが研修したのは『Regis et Jacques MARCON(レジス・エ・ジャック・マルコン)』。レジスとジャックの親子2代でミシュランの三ツ星を守り続けるレストランだ。
研修の前半は、部門シェフを日本人が務める肉部門に配属。それまでコミュニケーションに自信がなかった飯島さんは、あることを心がけるようにした。
フランス校での外来講習、Régis et Jacques MARCON(レジス・エ・ジャック・マルコン)の研修生として、ジャック・マルコンシェフの助手を務める
「研修生が任される仕事は限られています。でも、言われた仕事をするだけでなく、聞き耳を立てて、どんな会話が交わされるかに神経を注ぎました。そして、次にどんな指示が出されるか、予測するようにしたのです。その後、フランス人だけの前菜部門に異動しましたが、会話に耳をすまし、次の展開を予測する習慣はとても役立ちました」(飯島さん)
天然真鯛のア・ラ・ヴァプール 桜海老とふきのとうのリゾット

印象的だった松本シェフの美しい料理

2016年2月、日本に帰国した飯島さんは就職活動を始める。フランスで学んでいた時から働いてみたい料理店の候補がいくつかあった。先生に相談をすると、そのひとつ『Restaurant FEU(フウ)』が新卒を募集していると教えられた。2012年から『ミシュランガイド東京』で一ツ星を獲得し続けるフランス料理の名店である。
フランス産仔牛のロースト、バニラ風味 銅鍋でミジョテした季節野菜を黒トリュフの香りと共に
「『Restaurant FEU(フウ)』の松本浩之シェフは僕がエコール 辻󠄀 東京で学んでいた時、『外来講習』で指導を受けていました。美しい料理も多くて、すごくテンションが上がる講習。僕のなかで一番印象的だったのが松本シェフの講習でした。とにかく料理が美しい。そしてもちろん美味しかった」(飯島さん)
木苺の生マカロン仕立て
改めて南青山のフウを訪れて松本シェフの料理を食べ、ここしかないと決意した飯島さん。就職希望を学校に提出、スムーズに進んで採用が決まった。
自身も辻󠄀調グループの卒業生である松本シェフは、飯島さんの第一印象についてこう語る。
「三ツ星のマルコンで研修した飯島君は大丈夫だろうと見込んではいました。でも、そのキャリアは学校が作ってくれたもの。自分の力じゃない。ここからは自分自身で創らなくちゃいけない。だから、天狗の鼻は一度折っておかないと…とは思いましたね(笑)」(松本さん)
松本シェフは26歳の時にフランスへ渡り、自身の力で「ラ・コート・ドール」などのミシュランの三ツ星レストランで働く機会を拓いた。その松本シェフだからこそ、伝えるべきことがあったのだ。
そして、働き始めて半年で感じる飯島さんにとってのプロとしての自負。
「最初の半年はアシスト的な作業でしたが、その後、デザートの担当をさせていただいたんです。一ツ星レストランのデザートとして恥じないように、フランス校時代の友人のパティシエに相談したり、自分なりに工夫を重ね、かなり緊張の日々でした。現在担当している前菜も、パーツが多く一つでも美しくないと、全体に影響するので、繊細な盛り付けを完成度の高いレベルでお出しできるように頑張っています」(飯島さん)

40代、30代、20代の先輩方を追いかけて

飯島さんには今の職場に3人の目標がいる。まず、40代の松本シェフ。
「シェフはお客様にその日限りの特別な料理を作ります。まず見た目がすごく美しくて、食べても美味しい。そして意外性があります。料理の発想が本当に斬新で。これまで見たことがないような組み合わせなんです。本当にすごい発想力をお持ちです」(飯島さん)
「2人目はスーシェフ。肉や魚の火入れが完璧です。決して外すことがない。まかないを作るときに、火入れのことをお聞きしたり、いろんなことを教えていただけるので、とても参考になります。そして3人目は26歳の先輩。26歳という若さで、シェフ、スーシェフに続く3番手であることもすごいのですが、周りへの気遣いがとてもすごい方です。先輩方をフォローしながら、自分の仕事をきちんとこなして、さらには後輩の面倒も見られて。僕も5年後にはこういう力をつけられるよう頑張りたいです」(飯島さん)

素直な人は新しい方法を、どんどん吸収して成長していく

「若い頃、あるシェフに『料理は性格。返事ができない奴にうまい料理をつくれるはずがない』と言われたことがあります。当時は若気の至りで『そんなことないだろう、だったら俺にもうまい料理がつくれる』と息巻いたりもしました。でも、今はつくづく料理は性格だと思います。だって、料理の技なんて数えきれないほどあります。頑固で素直さがない人間は他人の助言を聞けません。でも素直な人はどんどん新しい方法を吸収して成長していくのです。そういった面でも飯島君は良くやっていると思いますよ。彼は自分で考えることができる。自分で課題を見つけて、克服しようとする。だから、彼には自由にやってもらっています」(松本さん)
松本シェフは、今でも辻󠄀調時代の教科書「フランス料理入門」を永遠のバイブルとして厨房に置いている。

これから目指す道のためにできること

「最終目標は、自分のお店を出すことです。それまでのステップアップの方法は色々あると思いますが、その数多い選択肢の中でどう自分が選択していくかだと思っています。今はここで、一つも恥じない料理を提供するために一つひとつの仕事を丁寧にやっていくことに力を注いでいきたいと思っています」(飯島さん)

飯島椋介さん の卒業校

エコール 辻󠄀 東京 辻󠄀フランス・イタリア料理マスターカレッジ  (現:辻󠄀調理師専門学校 東京) launch

辻󠄀調グループフランス校 フランス料理研究課程 launch

辻󠄀調グループ フランス校

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