INTERVIEW
No.137

誇れる専門職に就きたいと、高校から製菓を学び専門学校へ。憧れだったホテルのパティシエになる夢を諦めずに努力で叶え、今も成長中。

ザ・リッツ・カールトン大阪 パティシエ

松浦昂希さん

profile.
大阪府出身。太成学院大学高等学校の製菓パティスリーコースから2017年4月、辻調グループのエコール 辻 大阪 辻製菓マスターカレッジに進学。11月からザ・リッツ・カールトン大阪のペストリーへパティシエとしてアルバイトに入り、3月の卒業後も継続。4月からは同ホテルのベーカーでパンづくりを担当。1年後、ペストリーの焼き場担当に。2020年4月からは正社員として勤務。現在は焼き場をメインに担当している。
access_time 2021.09.01

イメージがつかないまま進学するより、早い段階から手に職をつけたかった。

1998年に大阪で生まれた松浦さん。母親の手伝いをしたのがきっかけで、中学に入ると自分でもお菓子をつくるようになった。
「家族や友人から『こんなのがつくれるなんてすごい!』と言われるのがうれしかったんですよね。人に喜んでもらえることが楽しくて、どんどん製菓が好きになっていきました」
パティシエになろうと決めたのは中学時代。イメージがつかないまま高校・大学に進むより、早い段階から手に職をつけたかったと振り返る。
「職業名を言えば『かっこいい!』と言ってもらえるような、専門性のある仕事に就きたかったんです。音楽も好きだったのでその道も考えたものの、中学校の先生に相談したところ、仕事につなげるのは相当難しいと言われて…。特化したコースのある各高校の体験入学にも行ったんですが、製菓のほうがより楽しく感じられたことで決断できました」
こうして太成学院大学高等学校の製菓パティスリーコースへ進学。製菓が学べる高校はほかにもあったが、体験入学での印象に加え、製菓の専門学校を擁する辻調グループが提携校だったことが決め手になったという。
「設備も整っていましたし、より専門的なスキルが身につくだろうと感じたんですよ。お菓子って極端な話、卵と粉と砂糖だけで、いろんな種類がつくれるのって、ものすごく不思議で面白いじゃないですか。知れば知るほど、のめり込んでいきました」

高校で製菓を学び、ザ・リッツ・カールトン大阪で働くことが将来の目標に。

入学当初は、ただ「パティシエになりたい」としか思っていなかった。しかし学んでいくうちに、お菓子の世界にも様々な分野・スタイルがあり、働き方も様々であることに気づいていく中、自分は何が一番したいのかを考えるようになったという。
太成学院大学高等学校時代
「アシェットデセール(皿盛りのデザート)を作れるようになりたいと思ったんです。普通のケーキと違い、その場限りの一瞬にかける美しさに惹かれました。携わるには、パティスリーではなくレストランかホテルに進む必要がある。なかでもホテルなら、レストラン以外の経験も幅広く積めるなと考えました」
太成学院大学高等学校時代
ならば、どのホテルに就職したいか。真っ先に思い浮かんだのが、ザ・リッツ・カールトン大阪だった。
「高校で1年上の先輩たちが、『この専門学校からリッツ・カールトンに就職した人がいる!』と盛り上がっていたんですよ。それで調べてみたら、世界的に有名な格調高いホテルだとわかって…。その時点でもう、『将来はここで働きたい!』と心に決めました」
エコール 辻 大阪時代
高校卒業後の2017年4月には、辻調グループのエコール 辻 大阪 辻製菓マスターカレッジに進学。
「実習量の多さと先生からのサポートも頼もしく感じました。少人数のグループごとに1人の先生がついてくださるので、わからないことはすぐに訊けましたし、どの先生に質問してもきっちりとした答えが返ってくるんです。理論的な部分もしっかり教えてもらえ、『なぜこうなるのか』がわかりやすく、技術も納得して身につけられました」
エコール 辻 大阪の卒業式にて

先を読んで動くことで先輩たちからの信頼を得て、長期の仕事へとつながった。

「担任の先生には、入学直後の面談でリッツ・カールトンに入りたいと伝えました。狭き門ではあるものの、2年ほど前にも就職された先輩がいると聞いて心強かったです。実際に足を運んだのは専門学校に入ってからでしたが、圧倒的なラグジュアリー感に惹かれて…。ここのロゴが入ったコックコートを着て働けたら、どれだけかっこいいだろうと、憧れがますます高まりました」
しかしその年、新卒採用の募集は行われなかった。別のところへ就職することも考えてはみたが、気持ちは変わらなかった。
「秋になり、ペストリー(洋菓子部門)の短期アルバイトの募集があったんです。11~12月の間だけでしたが、面接を受けてみたところ、将来的にアルバイトから社員になれる可能性もあると聞いて。学校の先生には『本当にアルバイトでいいのか』と止められましたが、絶対に評価されて社員になろうという意志で働き始めました」
2カ月間の働きぶりで、長期アルバイトとして雇ってもらえるかどうかが決まる。このチャンスを活かそうと心がけたのは、先を読んで動くことだった。
「先輩がやっている仕事を見て、次にこれが要るなと判断したものを、先回りして用意するよう努めていました。先々を予測しての対応力は、学校で鍛えられたこと。グループ実習が多かったので役割分担が重要でしたし、先生からも指導されていました。講習のときにも、教壇に立っている先生をサポートする助手の先生の動きを見て勉強していたんですよね。おかげで先輩方から『気が利く』『段取りがいい』と褒めてもらえ、シェフからも『このまま続けないか』と誘ってもらえました」

微妙な差で仕上がりが全然違ってくるのが、難しくもあり面白くもあるところ。

卒業までペストリーでのアルバイトを続け、4月にはベーカー(パン部門)へ。ホテルの朝食や宴会での提供、グルメショップでの販売など、多彩な種類を数多くつくる必要があり、毎日が忙しかった。
「雨と晴れでも、発酵具合が全然違ってくるんですよね。パンはゼロからのスタートだったので難しかったですが、新しいことが知れる面白さもありました。能動的に学ぶ姿勢は、学生時代に身についたと思います。1年後、ペストリーに戻ってからは焼き場の担当についたんですが、ベーカーで信頼を積み重ねられたおかげか、早くからいろんな仕事を任せてもらえました。パンづくりの経験は、発酵菓子をつくるのにも生きています」
パウンドケーキや焼き菓子は食べる分にも大好きだったので、焼き場の仕事はとても楽しかった。生地を焼く作業は奥が深く、それだけにやりがいがあった。
「メレンゲの立て方や材料の混ぜ方などの微妙な差で、仕上がりが全然違ってくるのも、難しく面白いところです。生地を均一にのばすのも最初は苦手でしたが、『数をこなすしかない』という先輩からの助言を受け、積極的にやらせてもらって。徐々に美しく早くできるようになっていきました」
先輩たちは皆優しく、訊ねると丁寧に教えてくれる。修業は大変だったが、恵まれた職場環境だと実感していた。
「成人式で中学時代の先生に会ったとき、『パティシエになりたいって言っていたけど、今どうしているの』って訊かれて、ホテルの名前を伝えると、『おおお!』と感心してもらえ、これこれこれと(笑)。高校時代の先生にも『すごいやん!』と驚いてもらえましたし、周囲の励ましもあって、高いモチベーションでいられました」

メインの持ち場に加え、さまざまな経験ができるのもホテルならではの醍醐味。

働き始めて3年目の2020年4月、念願の正社員に。その冬には焼き場をメインに担当することとなる。前任者から引き継ぐのは大変だったが、わからないことは全て訊ね、技術も知識も貪欲に吸収した。
「苦労はしましたが、全ての作業ができるようになった喜びもありました。自分の手でお菓子をつくりあげるのは楽しいし、生地をのばしていると『パティシエしてるなぁ』と感じてうれしくなります(笑)。同じ材料で同じようにつくっても、人によって違うものができてくる。それを解決していくのも面白いです。先に理論を知っていると原因も究明しやすいので、常に疑問をもちながら学んできて良かったなと感じます」
エグゼクティブペストリーシェフ ファビアン・マルタン氏(左)
新たなスタッフが入ってきて、教える難しさや楽しさも覚えるようになった。メインの担当は焼き場だが、ほかの部門にヘルプで入ることもあるという。
「ペストリーの仕事はほかに、ムース系の仕込み、チョコレートの担当、バンケット(宴会場)での皿盛り、ロビーラウンジのデザート準備、グルメショップのケーキ担当などがあるんですが、いろんなことが経験できるのもホテルならではの醍醐味です。季節ごとにメニューが変わるから扱える種類も多いですし、イベント事も多い。たとえばロビーラウンジでは、いろんな企業とコラボしたアフタヌーンティーを出しているんですが、その企業に由来する土地のお菓子をつくったりもするので、とても勉強になります」
ザ・ロビーラウンジで提供されるアフタヌーンティー
料理人と関わり合えるのも、ホテルで働く良さだと松浦さんは語る。
「たとえば日本料理のレストランからの依頼で、桜や抹茶、炭のシュークリームなどをつくったりもしています。毎年、冬にはヘキセンハウス(お菓子の家)をつくるんですが、昨年はいろんな部署の若いスタッフと一緒に取り組めて楽しかったです。ちょうどその頃、会社全体で別の部署の仕事を体験する取り組みがあって。僕自身も宴会のサービスを手伝い、いい経験になりました。どんな仕事にも気配りは大切。サービスという仕事にふれることができて、より意識が高まりました」
『ヘキセンハウス』(お菓子の家)

お菓子を教える立場への興味も高まり、まだまだ幅広く勉強を続けたい。

「近ごろは、朝、出勤してグルメショップのケーキの仕上げを手伝いつつ、スコーンやカヌレ、フィナンシェなどを焼き菓子を準備するのが日課になっています。僕の手がけたお菓子がSNSに上がっているのを見るとうれしくなる。ゲストの喜びが、やりがいにつながっています」
現在の目標は、さまざまなコンテストに挑戦し、入賞すること。ザ・リッツ・カールトン大阪では、コンテストへの参加も積極的に支援している。
(上から順に)チェリータルト、ラズベリータルト、マンゴータルト
「昨年、ガレット・デ・ロワ(アーモンドクリームのパイ)のコンテストに応募し、結果は残せなかったんですが、毎年、注文してくれるゲストや年始の宴会に向けてつくってみないかと言ってもらえて。コンテストが仕事につながったことがうれしかったです。折り込む生地の数や、中に入れるクリームの量で食感が変わるのも追究しがいがある。今年も挑戦に向けて頑張っています。優勝含めさまざまな大会で好成績を修めている先輩たちが多いので、今後もどんどん教えてもらいたいです」
ピスタチオ パリブレスト
シェフや先輩たちが、普段と違うことをしていたり、知らないものや新しいものをつくっていたりすると、すぐに訊ねるのが松浦さん流の成長法だ。
フォレ ノワール
「今年の4月に、フランス人のシェフが新しく入ってこられ、専門学校で学んだフランス語が役立っています。名だたるホテルやレストランで働いてこられた方なので、アシェットデセールも教えてもらいたい。機会があればチョコレートにも挑戦したいし、まだまだやりたいことばかりです」
ザ・ロビーラウンジ
幅広く学び続ける一方で、後輩への指導を通じて、ゆくゆくはお菓子を教える立場にもなりたいと思うようになった。
「何を訊いても答えてくれる先生方に、もともと憧れていましたからね。知っていることが多いほうが、将来、教える場合も説得力がありますし、まだまだ勉強を続けたいです」
楽しい仕事だからこそ、その楽しさを伝えたい。そう考える松浦さんが、最後にこんなメッセージをくれた。
ザ・リッツ・カールトン・グルメショップ
「パティシエとして就職したところで、100%うまくいくとは限りません。そのお店が合わないからといって、パティシエそのものを辞めてしまうのはもったいない。探せば、すごく自分に合ういい職場はあるし、それを知っている自分からすると、1店舗で諦めてほしくないと強く思います。お菓子づくりが好きでさえあれば、続ける道は必ずある。好きな仕事をする楽しさを、これからめざす人たちにも味わってほしいです」
エグゼクティブペストリーシェフ ファビアン・マルタン氏と

松浦昂希さんの卒業校

エコール 辻 大阪 辻製菓マスターカレッジ launch

エコール 辻 東京
辻製菓マスターカレッジ

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